bjbounceの日記

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(過去の記事) 父と子と、ダービーと

(この記事は、2021年の日本ダービー後に書いたものですが、
競馬仲間から、とてもいい記事だった、と言われたので、復活再掲します)
 
2021年の日本ダービーは、22歳の横山武史騎手のエフフォーリアが圧倒的人気。
文句のない騎乗で、勝ったかと思ったが、
道中でやや不利のあった福永祐一騎手のシャフリヤールがハナ差だけ差し切り、優勝。
福永祐一騎手は史上3人目のダービー連覇を果たした。
 
敗れたエフフォーリアの横山武史騎手は、
名手として知られる横山典弘騎手の三男で、22歳。
今から31年前、1番人気のメジロライアンでダービーに挑んだ父・横山典弘騎手も、当時22歳だった。
結果は、アイネスフウジンの逃げ切りを捕まえられず、2着。
父の22歳の無念を乗り越えることは、できなかった。
 
「ライアンがいちばん強い」
当時の横山典弘騎手は、強気にそう言っていた。
しかしメジロライアンは大きなレースを勝てず、
周りからは、また言ってるよ、という目で見られていた。
 
「今日負けたら、俺は二度と、ライアンがいちばん強いとは言わない」
そう言って挑んだ宝塚記念
同じメジロの最強馬、メジロマックイーンを破り、
メジロライアンに初のG1タイトルを摑ませた。
 
その父が初めて日本ダービーを勝ったのは、
デビューから24年目、15回目の挑戦でのこと。
名手と呼ばれる騎手でも、それだけの時間がかかったのだ。
そして、31年前のあの悔しい敗戦があったからこそ、
今の「騎手・横山典弘」があるのだ。
 
2021年・日本ダービーには、
横山武史騎手だけではなく、横山典弘騎手も騎乗していた。
レース後の検量室、横山典弘騎手は武豊騎手と並んで顔を洗いながら、
「やっぱり厳しいな」
と話しかけていた。
自分の事ではない。 息子のことだ。
武豊騎手は、顔を拭きながら頷いていたという。
 
その後、レースのリプレイを見つめる武史騎手の肩に、
典弘騎手が手を置いて、一緒に画面を見上げていた。
 
父は息子に、31年前の自らを重ねただろうか。
父は息子に、31年前の自らを語ったのだろうか。
 
 
ダービーを勝ったシャフリヤールの藤原調教師は、
横山武史騎手を、こう表現した。
「将来トップになる若武者」
 
その遠くない将来に、
今年の日本ダービーは、間違いなく活きるだろう。