旅の思い出① ~奥大井の秘境駅へ~
今回は、お友達からのリクエストに応え、
過去に旅をした思い出を記していこうと思います。
といっても、旅の思い出は数えきれないほどあります。
なので、まあ、シリーズとして続けて行こうかと・・・・
記録によると、2009年の出来事で、まあ、いろいろ心労もあり、
心が傷ついていた時期でもあったので、いつもと違う景色が見たくなって、一泊二日で旅をしました。
早朝に新横浜から新幹線に乗り、静岡経由で金谷駅へと向かい、
そこから大井川鐡道のSL急行に乗り、終点の千頭駅へと向かいました。
SL列車に乗るのも、旅の目的でもありましたがね。
終点・千頭駅でのSL。平日なのにかなりの乗車率でした。
千頭駅からは、同じ大井川鐡道の井川線に乗り、目的地でもある奥大井湖上駅へと向かいました。
こちらが井川線の車両ですが、ホーム上の男性と比べると、車両の小ささがわかると思います。
井川線は「南アルプスあぷとライン」と呼ばれており、急勾配を登っていく路線で、
元々はダム工事の資材などを運ぶための路線でした。
路線にはいくつかの集落もあり、道路は冬になると凍結して通行止めになるため、旅客化された、というものです。
今では観光路線となり、途中には温泉地もあることから、特に秋の紅葉シーズンなどは多くのお客様が訪れます。
そしてもうひとつ、この路線には特徴があります。
それは日本で唯一「アプト式」という方式を取り入れている箇所があることです。
アプトいちしろ駅から、長島ダム駅の間は「1000分の 90パーミル」という急勾配で、
これは「1000m(1km)の間に、90m登る」という意味です。
わかりやすく10等分にすると、100m進む間に9m登ることになります。
この勾配を普通の列車で登ろうとすると、車輪が空回りして登れません。
そこで「アプト式」という方式が取り入れられ、専用の機関車が用意されました。
アプト式というのは、通常の線路の間に敷かれたギザギザのラックレールに、
専用機関車に取り付けられた歯車を嚙み合わせて登っていく、という方式です。
こちらがラックレール。
機関車に描かれた絵が、その方式を良く表していますね。
こちらが専用機関車で、後ろから押し上げてくれます。
連結します。
乗務員さんの案内に従って、乗客の皆さんも降りて作業を見学していました。
この個体差・・・後ろの機関車の方が、通常の大きさでもありますがね。
こうして急勾配を登り(窓から見る景色は、本当に傾いてます)、
長島ダムで専用機関車を切り離し、列車は南アルプスの山中を目指して、
ダムを作るために、この辺りの集落は底に沈み、旧井川線の線路もダムに沈みました。
写真の右手、道路がダムの中に沈んでいっているのがわかります。
目的地、奥大井湖上駅の手前で、レインボーブリッジを渡ります。
都内にあるレインボーブリッジよりも前に名づけられたので、こちらが元祖ですね。
こちらが、奥大井湖上駅。
ダム湖の上に作られたホームに、小さな待合室がひとつ。
で、ホームから後ろを振り返ると・・・
これは駅ではなくて、コテージです。
私が訪れた当時は、中は区切られたスペースがいくつかある2階建てで、駅舎とは言えず、おそらくは登山するための方々が、寝袋などを持ち込めば、ここで泊まることもできるようになっていました。
なぜならこの後ろは、もう山だったので。
現在は週末のみ、カフェとして営業しているそうで「蒼い湖上カレー」がSNSで知られているそうです。
正面をよく見ると、鉄橋の跡が・・・これは旧井川線で使われていた線路です。
線路の横を歩くと、トンネルの上にある階段を使って、左上の道路に出ることもできます。
ただ、歩くと15分くらいかかるらしいです。
鉄橋の通路から写した列車の写真。
雲に煙る山々が神々しく見えます。
そして湖の方を見ると、この景色。
折り重なるように現れる山々の姿は「山の十二単」と呼ばれています。
この景色は、ここに来なければ見られなかったなあ・・・
南アルプスの入り口、なぜこの時、ここに来ることになったのか、
ここに呼ばれたような気がして、その理由が分かったようでした。
空も、雲も、大地も、緑も、太古のままそこにあるのに、
我々はそれを、勝手に忘れてしまい、喪って(うしなって)しまった。
人間は本来、空を見上げ、大地を足で踏みしめ、こういう自然の中で生きていく生き物なのだ、と、
ある作家の先生が書き残した短い文を思い出しました。
ここに来られて、よかった
心からそう感じました。
中部の駅百選に選ばれていますが、この駅はその後、
日本の不思議な駅・ベスト3という番組で、1位に選ばれ、
100人の外国人が審査する「COOL JAPAN AWARD」にも選ばれ、
一躍有名になりました。
だから、あの時のように、一人静かに・・・ということはできないかもしれませんが、
もし、興味をお持ちになりましたら、訪れてみてはいかがでしょうか。
SL、小さな列車、アプト式区間、急勾配、そして、大自然の秘境駅が、
あなたを待っています。
ちなみに・・・東京から奥大井湖上駅まで向かうと、だいたい5~6時間かかります。
日帰りできなくはないですが、井川線沿線の温泉地か、静岡駅周辺で宿泊することをお勧めします。
旅の思い出、その第一弾でした。
他の記事もはさむと思いますが、このシリーズは続けていきますね。
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。